座談会
ISSUE JHD&C×和歌山刑務所×和歌山市社会福祉協議会 白百合美容室 座談会-1
和歌山刑務所の受刑者によるボランティア参加と、JHD&Cのヘアドネーションが、どのようにつながったのか?それぞれの思いを座談会にて語りました。
ヘアドネーションの送り先は大阪にあるJHD&C事務局のみでしたが、2021年4月からドナーの任意によって、ドネーションヘア(髪の毛)の送り先を和歌山刑務所(女子和歌山刑務所内にある白百合美容室)に選ぶことができる取り組みが新たにスタートしました。
和歌山刑務所(白百合美容室)の受刑者によるボランティア参加と、JHD&Cのヘアドネーションが、なぜ、どのようにつながったのか?
JHD&C(ジャーダック)・和歌山刑務所・和歌山市社会福祉協議会・それぞれの思いを座談会にて語りました。
JHD&C×和歌山刑務所×和歌山市社会福祉協議会
白百合美容室 座談会
参加者(順不同・敬称略)
*肩書きは座談会当時(2021年3月)時点のものです
和歌山刑務所
- 処遇部企画部門 首席矯正処遇官(企画担当) 法務事務官 看守長:福田雅峰(ふくだ まさたか)
- 処遇部企画部門 矯正処遇官 法務事務官 看守部長:砂山二美(すなやま ふみ)
社会福祉法人 和歌山市社会福祉協議会
- 地域福祉推進室 地域福祉班長:岩橋智秀(いわはし ともひで)
- 地域福祉推進室 地域福祉班:三木景子(みき けいこ)
JHD&C(ジャーダック)
- 代表:渡辺貴一
- 広報:今西由利子
目次
刑務官の普段の業務について
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渡辺:
今日はお忙しいところ集まっていただきありがとうございます!
和歌山刑務所さんにはこうして感染対策の準備もしていただいて感謝です。今回は、この取り組みが実現するに至る道のりとか、ご苦労などがあればざっくばらんにお伺いしたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。 -
今西:
それでは、まずは簡単に自己紹介をお願いします。
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福田:
和歌山刑務所 企画首席の福田です。よろしくお願いします。
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砂山:
和歌山刑務所 看守部長の砂山です。私は管理美容師でもあります、よろしくお願いします。
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岩橋:
和歌山市社会福祉協議会 地域福祉班長の岩橋です。よろしくお願いします。
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三木:
和歌山市社会福祉協議会 地域福祉班の三木です。普段はボランティアセンターにおります。よろしくお願いします。
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今西:
素朴な疑問なのですが、福田さんの役職名の「首席矯正処遇官」とは、どのようなお仕事をされているのでしょうか?
和歌山刑務所 処遇部企画部門 首席矯正処遇官(企画担当) 福田雅峰さん
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福田:
和歌山刑務所には、大きく分けて「保安」と「企画」という2つの業務があります。保安とは、収容者の処遇をしたり、注意指導したり、生活の指導をするような部門です。
企画は、こんな作業をさせましょうとか、こんな教育をしましょうとか、この人はこういう特性があるからこういう配慮が必要だというようなことを考える部門です。
私は首席矯正処遇官の中でも「企画担当」ということで、企画部門を総括しているポジションになるんですね。なので、刑務作業にこんなことを導入したいっていう話があれば、その作業の安全性は大丈夫かとか、こういう作業はできるかできないかを、保安の処遇部門というところと相談したうえで導入するかしないかを判断しています。
あるいは、受刑者の教育に関しては国が定めたプログラムがあるんですけど、この人にはこういう特性があるから、こんなプログラムを受けさせたらいいのではないかというところを判断したりするような仕事ですね。
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渡辺:
なるほど。今回のJHD&Cとの取り組みは「ドナーの任意によって、和歌山刑務所・白百合美容室に送られたドネーションヘア(髪の毛)の仕分けを行う」というものです。
個人情報保護の観点からドナーから和歌山刑務所に直接送付できないという問題がありましたが、和歌山市社会福祉協議会(以下、社協)さんが送付先としてとりまとめ先になってくださいました。 社協さん経由で送られた髪の仕分け作業を、和歌山刑務所の受刑者の方にこの場所(白百合美容室)でしていただくのですが、この作業は刑務作業としてはどういうものになるんですか?
『JHD&C・和歌山刑務所 白百合美容室・和歌山市社会福祉協議会』の取り組み
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福田:
そうですね、これは「社会貢献作業」という1つの刑務作業になります。社会貢献作業は、受刑者にボランティア精神を涵養(かんよう:少しずつ養い、育てること)できて、社会貢献できているという意義を受刑者が感じられるような作業で、作業をすることで収入や賃金を伴わないという形態ですね。
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今西:
受刑者に合わせて刑務作業を決めているのでしょうか?
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福田:
受刑者の処遇は「集団処遇」が原則なので、マンツーマンで作業をやることはないですが、和歌山刑務所には生産工場が6つあって、その工場で物を作る作業が中心となってきますね。あとは、お掃除するとか食事を作るとか、そういうことをする工場もあります。
作業の一環として美容科も含めていろんな職業訓練があるんですけど、例えば、この職業訓練に適正な人って誰だろう?じゃあこの人を当てましょうとか、この作業をするには何か資格があった方がいいよね、じゃあこの人ならできそうかなっていうのを考えて決めるんですよね。
実際は人手などのいろんな問題があって、その作業がその人の適正にピッタリあっているかっていうと現実的には難しいのですが、一応は適正を見たうえでそれぞれこの人にはこの作業、この工場でというのを考えています。
あと、初犯・累犯っていうのもありますし、やっぱり受刑者にもいろんな人間関係があって、顔を合わせたらまずいねっていう人たちもいるんですね。そういったところを含めて、処遇部門と一緒に、この人にはこの作業をさせましょうということを決めています。 今回の、こんなご縁があってこんなことをやりたいんですっていうのは、まさに企画の仕事ですね。
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渡辺:
新たな作業が加わったということになるんですね。
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福田:
そうです。もともと社協さんとは、まさにここ(白百合美容室)で、賃金を伴わない社会貢献作業という形で「タオル帽子製作」をしていたので、いわばすでにベースができていたんですね。
社協さんとは、従前からもうちょっと何か一緒にやりたいですねっていうお話をさせてもらっていました。そこに「ヘアドネーション」というアイデアが浮かんできてご相談させていただきました。
次ページ:ジャーダックとの取り組みのきっかけ
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