座談会
ISSUE JHD&C×花王 髪の毛の研究に関わる花王とJHD&Cの座談会-1
研究開発のテストに欠かせない評価毛について、疑問、偏見、「普通の見た目」とは何なのか、そして花王という会社と仕事について語っていただきました。
JHD&Cのヘアドネーション活動には、様々な企業・団体がJHD&Cの理念に共感し、パートナーシップを結んでいます。
ヘアケアやホームケア製品など、多くの日用品を展開している花王株式会社とJHD&Cをつないだのは「評価毛」でした。
花王のヘアケア研究に携わる皆さまとJHD&Cの座談会では、研究開発のテストに欠かせない評価毛について、白髪や年齢にともなう髪の毛の変化などの疑問、また脱毛への偏見、「普通の見た目」とは何なのか、そして花王という会社と仕事について語っていただきました。
花王×JHD&C 座談会
参加者(順不同・敬称略)
花王株式会社
- ヘアケア研究所第2室 室長:内山智子
- ヘアケア研究所第2室:川上るな
- ヘアケア研究所 主席研究員:長瀬忍
- 研究戦略企画部 部長:山口紀子
- 研究戦略企画部 主任研究員:重久真季子
JHD&C(ジャーダック)
- 代表:渡辺貴一
- 広報:今西由利子
目次
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渡辺:
今日はお忙しいところお集まりいただきありがとうございます!まずは、簡単に自己紹介をお願いいたします。
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内山:
花王ヘアケア研究所第2室・室長の内山です。スタイリング剤やヘアオイル等、お風呂の外で使うヘアケア製品を開発しています。
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川上:
同じく花王ヘアケア研究所第2室の川上です。スタイリング剤やアウトバストリートメントなどを担当しています。様々なものから髪を守ったり、髪を綺麗にするヘアケア製品を開発したりしています。
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長瀬:
花王ヘアケア研究所・主席研究員の長瀬です。髪の仕組みを詳しく調べて、シャンプーなどのヘアケア製品を作っています。
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重久:
花王研究戦略企画部・主任研究員の重久です。想いを同じくする仲間と協力し、花王がもつ研究の力も活かして、ソーシャル課題解決を目指した構想を設計しています。
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山口:
花王研究戦略企画部・部長の山口です。未来に向けてソーシャルなビジネスを構想中です。今日はどうぞよろしくお願いいたします!
花王が評価毛を選ぶ基準とは?
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渡辺:
花王さんは、我々JHD&Cに寄せられるヘアドネーションの中から31cmに満たない長さの髪を「評価毛※」としてお譲りすることで、毛髪の研究や製品開発に役立ててくださっているんですよね。
【参照】JHD&C× 花王 ─花王ヘアケア研究所・評価毛─昨年も、JHD&C事務局で1週間にわたって、仕分け作業をしながら真剣に髪を選んでいる姿がとても印象的でした。川上さんも事務局にお越しになりましたよね。どういう基準で髪を選ばれたんですか?
「トレス」というテスト用の毛束になった評価毛
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川上:
私の研究室の場合、人の実際の頭に近い、大きいトレス※を作ることが多いので、評価毛としては「できるだけ長くて量が多いもの」という選別基準があります。
31cm未満の毛髪の中でもできるだけ長いもの、具体的には25cm以上で、量も100gくらいあると望ましいです。
研究ではできるだけ実際の人間の頭に近い状態で、A剤、B剤、または剤なしだとどうかということを一連の流れで評価しています。我々の部署では、アウトバス※の研究として「セグレタ」(うねり始めた大人の髪のためのブランド)や「フラット」(くせ毛ケアのブランド)も担当しているので、直毛だけじゃなく白髪やくせ毛に関しても同じ条件で髪を選別させていただきました。
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内山:
我々の研究室ではスタイリング剤の研究も行っていまして、カールのつき方や、くせを整えてきれいに巻けるかどうかということを評価するために、ある程度の長さと量が必要です。
また、違う人の髪では評価の比較ができないので、同じ人の髪で条件を変えて比較します。そのためトレスも複数必要になります。
そういう点でも、量があって長さがあって、ひとくせある髪の方が、皆さんのお悩みのための研究としてはやりやすいというところがあります。 -
長瀬:
私は、インバス※のシャンプーやコンディショナーを作っている部署と、カラー剤を作っている部署の研究員と一緒に髪を選別させていただきました。
白髪用のカラー剤と、黒髪用のカラー剤の両方を作っているので、研究には白髪を含めいろんな髪質のものを使用しています。
白髪も黒髪も、どちらも毛質によって染まり方が違うため、いろんな人の髪で評価する必要があります。しかし、白髪の毛髪はなかなか手に入りにくいため、JHD&Cさんからドネーションヘアを譲り受ける機会は本当に貴重で、大切に活用させていただいています。 -
今西:
確かに、最近はグレイヘア(白髪)も人気ですが、染める方が多いですものね。白髪は貴重なんですね。
JHD&Cに寄せられたグレイヘアのヘアドネーション
CHECK!
- ※評価毛
- ヘアケア製品やカラー・パーマ剤など、「髪」にまつわる製品を研究開発する際には、製品の性能や使いやすさに関するさまざまなテストが欠かせない。そのテストに使用する毛材のことを、評価毛(ひょうかもう)という。
花王ヘアケア研究所では、JHD&Cに寄せられるヘアドネーションのうち、31cmに満たない短い髪の毛を選別して買い取り、評価毛として役立てている。 - ※トレス
- カラー剤やパーマ剤などの薬剤の品質や効果、シャンプーやスタイリング剤などの性能や使用感など、多岐にわたるテストを行う際に使われる毛束のこと。
- ※アウトバス
- アウトバストリートメントのこと。ここではお風呂場の外で使うヘアケア製品を指す。
- ※インバス
- ここではお風呂場の中で使うシャンプーやトリートメントなどのヘアケア製品のことを指す。
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長瀬:
実際にシャンプーの評価をする時は、トレスにシャンプーを塗布して泡立て、うまく洗えるかどうか、また濡れた状態からドライヤーで乾かすまで、手で触ってその感触を確かめています。
毛髪は評価毛として使う場合と、基礎研究のために使う場合があって、基礎研究では根元と毛先で何が違うのか、髪質のそもそもの違いは何なのか、太い髪と細い髪、くせ毛と直毛で何が違うのかなどを調べます。
それによって、どういう剤を使えば悩みに答えられるかを研究しています。実は、研究員それぞれが「お気に入りの毛束=マイトレス」を持っているんですよ。
製品によって、くせ毛用やカラーした髪用などがありますので、製品のタイプによって専用の毛束を使う場合もあります。自分のお気に入りの毛束を使うと感触の違いがよくわかるんです。
トレスによるシャンプーの評価
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内山:
私も昔、「マイトレス」を持っていました。お1人の方からいただいた髪で20cmくらいのトレスを作って、評価に使っていました。そちらを使わないと、シャンプーの滑る・滑らないの良し悪しや、仕上がりのツルツル感などがわかりにくかったので、マイトレスで評価をしていましたね。
たまに別の研究員のトレスを借りると、マイトレスと引っかかり方が違って、差がわからなくなることがありました。そういう点でも、人それぞれ持っている髪質には全然平均値が出せなくて、髪って本当に人それぞれ、悩みもそれぞれだなと思います。
できるだけご本人の思い通りにできるような、そんな製品を作りたいなという思いで研究に取り組んでいます。
次ページ:くせ毛、白髪……髪のコンプレックス
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