座談会
ISSUE wig+(ウィッグプラス)座談会─ JHD&C×アデランス×資生堂-2
wig+を開発するに至った理由、また、JHD&C、アデランス、資生堂それぞれの担当者が、髪に悩みをもつ人たちと社会生活についてどのように考えているかなど、たっぷり語り合った座談会の様子をお届けします。
営利企業と非営利団体、そのコラボレーションの難しさについて
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渡辺:
今回の取り組みに限らず、NPO法人と営利企業が何かに取り組むのって、いい面と悪い面があると思うんです。
JHD&Cで言うと、今回のwig+開発とチャリティの無償提供はコンセプトの違うまったく別のチャレンジなんですけども、「今まではウィッグを無償で提供してきたのに、有料で販売するってどういうこと?」と批判の対象になる可能性だってありうるんです。資生堂さんとして、社会課題を解決するための取り組みは批判をはねのけてでもやるんだというお考えがあるんでしょうか。
小松原さん、いかがでしょう?
リモート参加の3名(左)資生堂・小松原さん(右上)アデランス・中原さん(右下)同・田中さん
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小松原:
私の仕事は神宮司さんをはじめとした、ヘアメイクアップアーティストのサポートをすることなんですが、一緒にお仕事をするようになったのはここ2年くらいのことです。
最初の頃に、神宮司さんは今後どんな分野に注力したいですか?と伺うと、がん患者さんの外見のケアを自分のライフワークのひとつにしたいっていう大きな思いを持っていることが分かりました。どうすればその思いを実現できるのかなって考えている時に、渡辺さんとアデランスさんとの出会いがあったんです。
初めは私、JHD&Cさんについてほとんど知らなくて、ホームページなどを拝見していろいろ勉強をさせてもらいました。
「いろんな髪型が個性として認められるように、髪がないことも個性として受け入れられる多様性のある社会を目指している」と、この理念は素晴らしいなと思いました。ただ、渡辺さんがおっしゃるようにNPO法人と株式会社ですので、どのようにして実現するかっていうところでは、最初は戸惑いもありました。
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渡辺:
株式会社は営利を目的とするもので、赤字になる恐れのあることって本来やっちゃダメなんですよね。企業の存在理由は収益を立てることで、非営利のNPOとは全く違います。それが一緒に取り組もうというんですから、お互いを理解するために何度も何度も話し合いましたよね。いろんなことを解決しながら、よくここまで来たなって思います。
さらに、アデランスさんは資生堂さんと違って、ウィッグにダイレクトに関わっている企業じゃないですか。
ウィッグを販売している企業が、ウィッグを無償で提供するNPOとタッグを組んでいるのってすごくユニークだと思うんですけど、中原さんはアデランスの広報として、ご自分の会社のことをどのように考えていらっしゃいますか?
座談会は大阪のJHD&C SALONと東京を繋いで行われた
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中原:
そうですね、当社も無償でお子さまにウィッグを提供する「愛のチャリティ※」という活動を40年以上続けていますし、病院内サロンでも日々小さなお子さんの悩みに向き合っていますので、「髪の悩みを心の傷にしない」という点でもともとJHD&Cさんと共通の思いがあると思っています。
当社の経営理念のひとつに「最高の技術と知識」があり、「技術には終わりはない」という意識が社内にあります。今回、神宮司さんと一緒に様々な試みをしていくなかで、レザーカットのテクニックを病院内サロンのスタッフに教えていただいたのですが、社員の技術や知識が向上し、お客さまだけじゃなく社員にとっても大変プラスになりました。
ヘアドネーションについては、「お子さんがヘアドネーションをしました」っていうニュースが注目されやすいですよね。メディア的には、ドナーであれ、レシピエントであれ、お子さんに焦点を当てがちだと思うんです。
その一時だけを切り取って見ればお子さんなんですけれど、JHD&Cさんでウィッグを受け取ったレシピエントさんが成長して、進学したり社会に出たりして、大人になってもウィッグが必要な方がたくさんいらっしゃいます。そういうことを、知識ではなく体験として改めて気づかされました。
CHECK!
- ※愛のチャリティ
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アデランスが行う医療用ウィッグの無償提供プログラムのこと。さまざまな理由により脱毛した子どもたちにオーダーメイドウィッグをプレゼントしている。1978年から続いている。
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中原:
神宮司さんのバングメソッドが加わったことで、「ウィッグってこんなにアレンジができて楽しい。可能性がすごく広がるんだな」というように、悩んでいる方をすごく元気づけられるものなんだなって思いました。
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渡辺:
同じく、アデランス広報として田中さんはいかがですか?
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田中:
私は日頃、CSR担当として学校での出前授業等に行く機会もあるのですが、学生さんのSDGsやヘアドネーションに対する意識や興味の高さをひしひしと感じているところです。
理美容技術を生かして貢献したいというニーズも学生さん・美容師さんともにあると思いますので、今回の取り組みでウィッグを似合わせるための美容の技術も広まっていただけたら嬉しく思います。
私も髪に悩みがあるのですけれども、やっぱりそういった方もたくさんいらっしゃると思うので、お悩みのある方が少しでも暮らしやすいような手助けを、ウィッグを通してできたらいいですね。
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